コロナ禍を契機に、弊所で扱う書類もS-signatureを使ったものが増えてきました(S-signatureの詳細については別記事をご参照下さい)。S-signatureについては記載方法が特許法施行規則(37 C.F.R)で定められており、原則としてフルネームをローマ字でタイプして頂いております。
一方で、社内規則等の事情から手書きでの署名(Wet signature)が使われていることも多いのが実情です。手書き署名に関して多い質問が、漢字での署名の可否についてです。
署名(signature)は、その書類に書かれた内容への承認、受諾、同意等の意思の表明のために行われます。署名者の意思の証明となっていれば、その様式は問われません。すなわち、フルネームであっても、一部を省略した形式(例えばファーストネームのイニシャル+ラストネーム)であっても、マークであっても(昔は読み書きのできない人が多く、そういう人は”X”を署名として使っていました)、署名者の意思が適切に記録されるものであれば法的には問題ありません。したがって、漢字を使った署名も法的に有効な署名として認められます。
気をつけなければいけないのは、署名は日本の実印と同じ効果を持ち、本人の同一性の証明にもなっている点です。したがって、法的な文書には一貫して同じ署名を用いるべきとされております。日本は依然として印鑑社会であり、法的な署名をする機会が極めて少ないと思われますが、パスポート(日本国政府による公的な文書)については手書きの署名をする必要があります。したがって、弊所ではパスポートと同じ署名を(すなわち、パスポートが漢字での署名であれば特許出願書類への署名も漢字)使うことを強く推奨しております。