1. はじめに

アメリカのイベント「SXSW(サウスバイ・サウスウェスト)[1]」にて、パナソニック社のおにぎりロボット「OniRobot(オニロボット)[2]」が話題となりました。

                                              出所:SXSW 2018 from Panasonic USA[3]

2. おにぎりロボットについて

OniRobotは5方向から圧力をかける「3D形成ハンドによる圧力フィードバック制御技術」を採用することで、職人の技を再現しており、両手で握ったような柔らかな食感に仕上げることができます[4]

出所:Panasonic Newsroom[5]

出所:Panasonic Newsroom[6]

自分好みにカスタマイズができ、具在は自由自在にアレンジ可能です。次世代型の飲食事業展開にも期待が高まっています。また、OniRobotは北米での展開予定ですが、「ランチにコンビニのギチギチおにぎりを食べたくない[7]」と、日本市場へ展開してほしいとの声もあります。

なお、特許庁のデータベースで調べてみると、OniRobot 関連の特許出願と思われる公開公報がありました。いずれも審査請求がまだされておらず、特許になるかどうかは不明です。また、対応する外国出願も無いようです。現時点では、どのような知的財産戦略を考えて出願を行っているかは解りません。

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・特開2017-055700
・特開2017-055701
・特開2017-079637
・特開2017-070276

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例えば、特開2017-070276を参照すると、米飯成型装置によって、「外部は固めで内部は柔らかくふっくらした状態となり、形を保ちながらも内部がふかふかの状態にあり、口の中で解れやすい食感になる」、と記載されています。

出所:         :(左)Panasonic Newsroom[8]                     (右)JPO:特開2017-070276より図面を抜粋して加工

 

なお、製品に印字されているOniRobotのロゴも商標出願されていました。

                                              出所: JPO:商願2018-018458 から抜粋

 

3. 伝統vs最新技術のおにぎり対決

一般社団法人おにぎり協会[9]は、OniRobotと、東京最古のおにぎり専門店「おにぎり浅草宿六」三代目店主三浦洋介[10]さんのつくった「おにぎり食べ比べ競演」を、11月28日(水)に西武百貨店池袋本店のキッチンスタジオで開催しました[11]

 

4. 有名企業とアメリカ市場

 OniRobotとはコンセプトが異なると思いますが、おにぎりマシン8割強のトップシェアの実績がある不二精機[12](株)は有名です。寿司ロボットも著名な製品です。なお、寿司ロボットは既に多くの企業が進出しており、米国市場には600億ドル分のチャンスがあるといわれています[13]

 

5. アメリカに店舗を拡げる“ONIGILLY”とは?

パロアルトにある弊所の近くにも“ONIGILLY”という、おにぎり専門店があります。伝統的な日本のおにぎりと健康的なカリフォルニアスタイルの料理を融合させたお店です。

ということで、実際に行ってきました(店舗:下記写真)。店の外観と内装はすごく綺麗で、一見するとカフェのような感じです。中には専用の職人さんがいて、手作りしてくれるようです。昼の時間帯というのもあり、お客さんは多く入っており、様々な種類のおにぎりを楽しんでいました。

メニューを参照すると、おにぎりだけでなく、ヌードルや汁物もあります。なお、おにぎり3つとトッピングで10ドルを超えていることから、日本人の感覚としてはやや高めです。ただ、トッピングの種類は多く、おにぎりの見た目はすごくお洒落なので、プレミアム感を味わいたい方はこの値段でも納得できるのかもしれません。

なお、このようなお店にOniRobotを導入すれば、人件費を安く抑えることができ、よりリーズナブルな価格でクオリティの高いおにぎりを楽しめるようになるでしょう。寿司と同じように、おにぎりも世界に広めていきたいですね。

出所: 弊所で撮影 2018年12月6日

 

出所: ONIGILLY[14]

6. おわりに

 個人的な見解として、おにぎり文化が世界に広がると、キャラ弁のご飯領域である“キャラおにぎり”の需要が増加すると考えています。ちなみに、“キャラ弁”とは、弁当の中身を漫画、アニメ、芸能人等のキャラクターあるいは自動車などのメカ、風景などに模したものをいいます[15]。現在では、キャラおにぎりにも高いクオリティが求められており、忙しい朝の手助けとしてキャラ成型ができるロボットあれば嬉しいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—以下、参考文献等—

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[1] 音楽のイベントとして始まったSXSWは、Twitter等を生んだテックの「お祭り」としても知られ、映画やゲームといった音楽以外のカルチャーをも取り込む街を挙げての巨大なフェスティバル。パナソニックは17年からSXSWへ出展し、同社の歴史で初となるプロトタイプのみの展示を敢行。

[2] パナソニック株式会社アプライアンス社の新規事業開発プロジェクト「ゲームチェンジャー・カタパルト」にて開発検証中のロボットです。

[3] Panasonic USA Youtube: https://www.youtube.com/watch?v=rAGEC0GR1NE  2018年11月28日参照

[4] パナソニック公式HP https://gccatapult.panasonic.com/ideas/onirobot.php 2018年11月28日参照

[5] Panasonic Newsroom Youtube https://www.youtube.com/watch?v=cZ9FQjPqqqk&t=8s 2018年11月28日参照

[6] 前掲(5)

[7] GIZMODO: https://www.gizmodo.jp/2018/08/onirobot-machine.html  2018年11月28日参照

[8] 前掲(5)

[9] 日本が誇る、和食「おにぎり」(ONIGIRI)を世界にひろめていくことを目的に立ち上げられた一般社団法人です。

[10] 東京最古のおにぎり専門店「宿六」店主。1954年の創業以来、カウンタースタイルでおにぎりを提供し続けている。

[11] 産経新聞 2018年11月24日付け記事 https://www.sankei.com/economy/news/181124/prl1811240006-n1.html  2018年11月28日参照

[12] 昭和37年に「饅頭・おはぎ」の自動成形機(包あん機)の製造メーカーとして設立致しました。その後「包あん機」の技術を生かして「おにぎりを作る機械ができないか」という発想のもとに、昭和45年日本で最初のおにぎり自動成形機を誕生させました。

[13] U.S FRONT LINE:https://usfl.com/2017/08/post/111418 2018年11月28日参照

[14] ONIGILLY 公式サイトhttps://www.onigilly.com/#about 2018年11月28日参照

[15] ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%A9%E5%BC%81 2018年11月28日参照