弊所スタッフ(日本国弁理士資格を所有)
1.はじめに
今般、2018年10月11日(木)にPatent Barをはじめて受験し合格しました。試験勉強に要した期間は1.5ヶ月程度です。今後、試験に挑戦される方の参考になればと思い、受験に関する情報を共有致します。
2.試験概要
以下のUSPTOのウェブサイトに記載されているように、試験範囲はMPEPの全Chapter(100章~2900章)で、6時間の試験時間(午前3時間、午後3時間、昼休憩1時間)で100問(午前50問,午後50問)の多肢選択式問題を、試験センターのPC上で回答します。70%以上の正答率が合格ラインで、試験中にはPDF版のMPEPを参照可能です。PCでの操作チュートリアルは以下のウェブサイトからアクセスでき、操作方法を事前確認できます。
https://www.uspto.gov/learning-and-resources/patent-and-trademark-practitioners/becoming-patent-practitioner/registration
私の受験場所はサンノゼの試験センター(2665 North First Street,以下写真)です。外観も内装も新しく、環境の整った快適な場所でした。
試験中にはメモ用紙(A3サイズ程度のもの1枚)と鉛筆2本が貸与されます。係員に要求すれば追加用紙が貰えます。主に私は事例問題で時系列を整理するために用い、午前で1枚、午後は追加用紙を貰いました。
【サンノゼの試験センター】
3.試験の準備
米国特許制度の全体概要をつかむため、「MPEPの要点が解る 米国特許制度解説」(丸島 敏一)及び「アメリカ特許実務マニュアル」(井上知哉)を通読しました。この2冊には、過去の試験で出題された事項が多く含まれています。全体像を概ね把握した後、過去問集(Wysebridge)を用いて問題演習を行いました。Wysebridgeの過去問はMPEPの章毎に分類されており、問題演習を行いつつMPEPの各章を読みながら勉強するのには好適です。過去問演習は全体を通して3回行い、試験直前には苦手な問題(200問程度)のみ確認しました。
試験範囲のうちChapter 1800及び2900は上記書籍にはあまり説明がないですが、Chapter 1800はPCT出願関連で、日本の弁理士試験にて学習した知識でほぼ十分です。Chapter 2900は、意匠の国際出願(ハーグ協定のジュネーブ改正)に関わるものです。こちらはJPOのウェブサイトに掲載されている制度概要を利用しました。
机に向かう勉強の他に、米国の中間処理案件(内外案件)の実務経験が役立ちます。私の場合は、内外実務に数年携わっていたことも奏効して合格できたと思います。Patent Barの試験勉強は、内外案件の対応に必要な主要知識をベースに、その周辺の多くの知識を積み重ねていくプロセスになります。内外案件の対応時に必ず目にするADS、IDS、Oath/Declaration、Assignment、応答書等には多くの規定が関連しています。これらの書類の役割、内容、提出時期等を把握することが米国特許制度の理解に大変有益です。私は米国事務所駐在中に、これらの書類の作成、確認、USPTOへの庁提出を実務を通じて学べ、勉強内容を生きた知識として頭に定着させられたと思います。
試験時間は6時間とやや長丁場で、結構な分量の英文をスピーディーに読んで問題を解く必要があります。過去問を解く際にはこの点に留意すべきで、私は1問あたり3分以内で解答できるよう所要時間を計測しながら学習しました。なおネイティブ用の試験対策情報の中には、MPEPを効率よく検索する方法(試験中にMPEPを使って必要情報を素早く見つける方法)をアドバイスしているものがあります。試験中にMPEPを参照する余裕はそれほどありませんので、私はこのアドバイスには従いませんでした。MPEPの主要事項は全て記憶しておき、いざという時にだけ試験中にMPEPを参照するというスタンスで臨んだ方が賢明と思います。
4.所感
過去問は一度目は結構難しく感じましたが、MPEP及び解説を丁寧に読み、理解が進むにつれて徐々に正答率が上がりました。過去問演習を中心に繰り返し学習すれば合格できる試験だと思います。他方で2013年以降の合格率は40%台と、やや下がってきている傾向にありますので油断はできません。勉強開始時の知識量・経験にもよりますが、ある程度の準備期間をかけて丁寧に学習し、満点を目標に試験に挑むことをお勧めします。これから挑戦される方の成功をお祈りします。
5.学習資料のリスト
・ Wysebridge(過去問集) https://www.wysebridge.com/
・ MPEP Ninth Edition
・「MPEPの要点が解る 米国特許制度解説」(丸島 敏一)
・「アメリカ特許実務マニュアル」(井上知哉)